地域の編集ラボ in 宝塚西谷

週末の関わりからニュープレイヤーへ

兵庫県宝塚市西谷地域にて、地域活動の担い手となる関係人口の創出を目指す「地域の編集ラボ in 宝塚西谷」が開催されました。 参加者は宝塚市内在住者をはじめ、兵庫県内から西宮市や三田市、県外からは大阪府大阪市まで多岐にわたり、総勢で10名。学生から社会人まで、宝塚市西谷地域の関係人口として、それぞれの経験やスキルを武器に地域課題の解決につながる企画の提案を行いました。 約1ヶ月間のプログラムをレポートします。 

DAY1|2025/11/19 キックオフミーティング

はじめの一歩をそろえる:キックオフ&地域を知る時間

初日となる2025年11月19日は、オンラインプログラムを実施。宝塚市西谷地域との関わりも様々な参加者が集まるキックオフミーティングとして、プログラムの説明と参加者の顔合わせを行いました。 まずは運営事務局より、 *そもそも関係人口とは何か、このプログラムで目指す関係人口の形(地域の課題を見つける、一緒に考える、地域と共に育つこと) *参加者には地域の課題を整理し、その解決方法を考えながら宝塚市西谷地域の関係人口になってもらうこと など、本プログラムで目指しているもの、またそれを踏まえて参加者の皆さんにどう関わってもらいたいかを説明しました。

運営事務局より、プログラムの説明と関係人口についてお話ししました。
運営事務局より、プログラムの説明と関係人口についてお話ししました。

次に、今回のプログラムの受け入れ先となる宝塚市西谷地域で活動を行っている『宝塚にしたに里山ラボ』代表理事の龍見奈津子さんより、宝塚市西谷地域について教えていただきました。 「宝塚歌劇」で知られ、大きな街というイメージが強い宝塚市ですが、実はその面積の3分の2を自然豊かな里山エリアが占めています。宝塚市西谷地域と呼ばれるこのエリアの人口は、2025年5月末時点で2,056人(市全体の約1%)、さらに高齢化率は49.7%となっています。広大な土地ながら人口は少なく、同じ宝塚市の市街地と比べても高齢化が進んでいるという特徴があります。 そんな宝塚市西谷地域で宝塚市の指定管理施設として「宝塚自然の家」の運営を行い、親子向けのイベントや地域の伝統を受け継ぐイベントを開催している龍見さん。龍見さんが語る宝塚市西谷地域の魅力は、 *飯ごう体験や天文台での星空観察、アスレチックといった、自然を生かした体験ができる *ちまきの食文化、参道をゆっくり登りながら厄除け祈願を行う「ケトロンまつり」、江戸時代の農家である旧東家住宅・波豆八幡神社など、歴史と文化が受け継がれる *米作、西谷野菜、6次産業化の動きもあるダリアなど、豊かな大地の恵み *自治会や西谷地区まちづくり協議会に参画する若手など、地域活性化に尽力する人々の存在 とのこと。こうした地域資源を生かしながら、まちを元気にする担い手の一員となることが関係人口に期待されているようです。 

「宝塚にしたに里山ラボ」の龍見さんより宝塚市西谷地域について紹介いただきました。
「宝塚にしたに里山ラボ」の龍見さんより宝塚市西谷地域について紹介いただきました。

こうした話を踏まえて、参加者の皆さんと宝塚市西谷地域で気になること、関わってみたいことなどをざっくばらんに話しました。 参加者からは、 「宝塚市の市街地に住んでいるが、アウトドアが好きで西谷にも通っている」 「大阪市から三田市内の大学に通っている。いつも電車で通る西谷が気になっていた」 「移住を考えるくらい西谷が好き」 「ライフワークで紙漉きをしている。西谷の資源を活用したい」 といった声が挙がり、宝塚市西谷地域への関心の高さが伺えました。 また地域に入って活動されている龍見さんへの質問も多く寄せられ、それぞれの視点で、宝塚市西谷地域について気になることを聞いたり、地域で活動する際のアドバイスを求めたりと、プログラムへの期待が感じられました。

オンラインで行われたキックオフミーティング。
オンラインで行われたキックオフミーティング。

DAY2|11/24 現地プログラム1

現場に触れて考える:地域課題を知り、西谷の人と出会う

2日目はいよいよリアルプログラムの実施日。 DAY1のオンラインプログラムを経て、参加者とスタッフは「なんとなく顔と名前は知っている」ような状態でしたが、実際に同じ場所に集まるのはこの日が初めてです。 これから関係人口として宝塚市西谷地域に関わっていく仲間になるためには、まず参加者同士が打ち解けることが大切。そこで最初のプログラムとして、アイスブレイク兼チームビルディングのワーク「薪タワーゲーム」を実施しました。

 

このワークの元になっているのは、屋内ワークショップなどでよく行われる「ストロータワーゲーム」(※ストローやテープなど限られた材料を使って、どれだけ高く自立するタワーをつくれるかを競うチームワークゲーム)です。 新入社員研修や組織開発の現場でも使われるこのワークを、今回は屋外・自然の家バージョンに大胆アレンジしました。 材料はストローではなく、自然素材の「薪」。 サイズ感は"本家"のストロータワーの約100倍。 素材も重さも形もバラバラな薪を前に、「どう組めば立つのか?」「高さを出すにはどうする?」と、各チームで作戦会議が始まります。どんなタワーをつくるかを話し合う作戦タイムでは、 ・アイデアをどんどん出す人 ・全体を見てタイムマネジメントをする人 ・実際に組み上げる作業に集中する人 と、自然と役割分担が生まれていきました。まだ出会って間もない参加者同士でしたが、「勝ちたい!」という共通の目的があることで、意見交換も活発に。 笑い声や驚きの声があちこちで聞こえ、一気に場の空気が和らいでいきました。

「薪タワーゲーム」で自然と参加者同士のコミュニケーションが生まれました。
「薪タワーゲーム」で自然と参加者同士のコミュニケーションが生まれました。
完成した薪タワーと参加メンバー。
完成した薪タワーと参加メンバー。

共同作業で、さらに距離が縮まる

チームビルディングのワークはこれで終わりではありません。 せっかく野外活動施設に集まっているということで、続いて飯盒炊爨(はんごうすいさん)・薪割り・焚き火の準備といった屋外での共同作業へ。 火を起こす、薪を割る、ご飯を炊く。 どれも日常生活ではなかなか経験しない作業ですが、だからこそお互いに自然と声を掛け合い、助け合う場面が増えていきます。 「これ、どうやるんでしたっけ?」 「火、ちょっと弱いかも」 そんな何気ないやり取りの積み重ねが、参加者同士の距離をさらに縮めていきました。

飯盒炊爨(はんごうすいさん)の様子。
飯盒炊爨(はんごうすいさん)の様子。

午後はインプットと現地視察へ

午後からは、「meet up ひょうご関係人口案内所 in 阪神北」を実施。 関係人口の考え方や兵庫県内での取り組み事例を共有し、午前中の体験を少し引いた視点で整理する時間となりました。(※詳細は別途レポートをご覧ください) その後はいよいよ、宝塚市西谷地域の代表的な地域資源・課題のある現地視察へ。

 

長谷牡丹園

最初に訪れたのは、宝塚市から事業委託を受けて運営されている『長谷牡丹園』。春には多くの来園者でにぎわう人気施設ですが、牡丹の開花時期は毎年4月下旬から5月下旬の約1か月間に限られています。 それ以外の季節の活用方法や、園までの交通アクセス、維持管理の担い手など、現場ならではの課題も少なくありません。 参加者からは、 ● 牡丹の苗や切り花販売など、収益事業の可能性 ● 日常的な手入れや管理の大変さ ● 繁忙期と閑散期のギャップ など、具体的な質問が次々と挙がりました。 施設管理を担う龍見昭廣さんからは、これまでの取り組みや、理想と現実のギャップ、今まさに直面している課題について、率直なお話を伺いました。 

宝塚市西谷地域内の『長谷牡丹園』を訪問しました。
宝塚市西谷地域内の『長谷牡丹園』を訪問しました。

宝塚ダリア園(佐曽利園芸組合)

続いて訪れたのは、宝塚市西谷地域を代表する花の産地、『宝塚ダリア園』。 組合長の小西昌治さんから、ダリア栽培の魅力や、宝塚市西谷地域ならではの気候・土壌の特徴についてお話を伺いました。 色や形の多様さ、美しさの裏側にある手間や技術、そして季節労働や担い手の課題。「きれい」という言葉だけでは語れない現場のリアルに、参加者は真剣に耳を傾けていました。

ダリア園訪問時の様子。
ダリア園訪問時の様子。

“関係人口の入口”を体感した1日

DAY2は、体を動かし、人と話し、現場を見るという体験を通して、宝塚市西谷地域を「知識」ではなく「実感」として捉える一日になりました。 「薪タワーゲーム」や野外炊事で生まれた関係性によって、その後の座談会や視察でも自然な対話が生まれました。そうすることで、地域の課題も「遠い話」ではなく、「自分たちに何ができそうか」を考える入口になりました。 関係人口と一口に言っても、地域に入っていきなり何かを解決できるわけではありません。 まずは知ること、感じること、関係をつくること。DAY2は、その最初の土台をしっかりと築く時間になりました。  

 

DAY3|11/26 中間セッション

考えをまとめる:チームでテーマをしぼり、次の一歩を描く

現地プログラムを終えた2日後、再びオンラインで集まりました。地域課題の解決方法を提案するという本プログラムの最終ゴールに向けて、現地で見聞きしたことを整理するのがこの中間セッションの目的です。 まずはDAY2を振り返り、参加者から感想を共有してもらいました。 「アイスブレイクのワークショップや飯盒炊爨が楽しく、子供の頃の気持ちを思い出した」 「焚き火を囲みながら、みんなで火をみる時間がゆったりとしていてよかった」 など、宝塚市西谷地域ならではの環境を満喫した方が多かったようです。 その後、現地で感じた西谷地域の課題や可能性を整理していくためのポイントを運営事務局よりお話ししました。 

地域課題を整理する際の考え方を運営事務局より説明しました。
地域課題を整理する際の考え方を運営事務局より説明しました。

〜課題の明確化の方法〜

*人と人とのコミュニケーションを生み出すような視点で考えよう 例えば、交通違反を防ぐために違反した人に罰則を与えるのではなく、ルールを守った人にサプライズプレゼントをするなど。 *高すぎず、低すぎず、「ちょうど良い視座」で具体的なアイデアを考えよう 課題解決のための方法が抽象的過ぎたり、固有の問題に寄りすぎたりしないことが、実効性を高めるポイント。 *ターゲットインサイト分析を使ってみよう 宝塚市西谷地域で気になったことについて、表層ではない深層意識の中にあるもの(言葉にできていないけど実は感じていること)からアイデアを考えてみる。 そして、今回のプログラムの受け入れ先であり、現地プログラムで訪問した3つの団体(宝塚自然の家、ダリア園、牡丹園)の課題解決方法の提案に向けて、グループワークを行いました。 宝塚自然の家、ダリア園、牡丹園と団体毎にチームに分かれ、それぞれ課題だと感じたことを整理し、団体の強みを生かして楽しい企画ができないかなどをブレスト。短い時間ながらも、さまざまなアイデアが浮かんだようです。 DAY3の終了後も、プログラム外の時間でチーム毎に集まる時間を作り、企画の練り上げを行いました。どんな企画が出来上がったのでしょうか。

グループワークの様子。
グループワークの様子。

DAY4|12/14 現地プログラム2

伝えてつながる:地域に向けたアイデア発表&交流

現地プログラムでの体験やチームでの話し合いを重ねて、いよいよ企画発表の日となりました。当日は、DAY2と同じく「宝塚自然の家」で開催。宝塚市役所の職員や牡丹園、ダリア園の関係者など、地元の方々にお集まりいただき、企画提案を行いました。

 

「大人の探究心をくすぐる自然の家」(宝塚自然の家への提案)

そして迎えた最終日。午後に控えた発表会に向けて、プレゼンテーション資料を完成させていく。担当のグループ毎に資料をまとめた後、発表のリハーサルと互いのグループにアドバイスを送るという作業を繰り返し、さらにスタッフや洲本市・高橋さんのアドバイスをもらいながらブラッシュアップしていった。

 

「宝塚自然の家」への提案の詳細はこちら

 

「牡丹を心の年中咲花(エバーブルームフラワー)に!」(長谷牡丹園への提案)

人による手間と時間をかけた美しい花が魅力の「長谷牡丹園」だが、その魅力を “伝える量”が少ないことや、物価高騰による運営上の負担が課題となっている。そこで、AIツールを使用して牡丹園のPRを発端として花の咲く季節に偏らずに収益を得る方法を関係人口が導入・サポートすることで、持続可能な運営の好循環をつくっていく。

 

「長谷牡丹園」への提案の詳細はこちら

 

〜宝塚ダリアの魅力をアップデート〜 ダリアのふるさと 球根アピール作戦(宝塚ダリア園への提案)

 ダリア園のメインは花よりも球根圃場であること。開花の時期以外に圃場を通ってもそこがダリア園だと気づきにくいことが認知度を高める上での課題だと感じた。そこで、より多くの人に気づき、来園してもらうためのPR方法を提案。桜と言えば吉野山、ラベンダーと言えば北海道・富良野のように「ダリアのふるさと」をタグラインとしてアピールすることで、ダリア園のコアなファンやシーズンオフも関わる関係人口を増やし、ダリア栽培の就農人口につなげる。

 

「宝塚ダリア園」への提案の詳細はこちら

 

発表の後には、地域の方々と一緒に焚き火を囲み、提案内容に関して深掘りしました。
発表の後には、地域の方々と一緒に焚き火を囲み、提案内容に関して深掘りしました。

地域の方に向けて発表できたことで、企画の実行に向けて参加メンバーも身が引き締まったことでしょう。ここからが関係人口としての活動のスタート。地域の方と連携しながら、楽しく取り組んで行ってもらえたらと思います。